欧州委員会は13日、年内に中国を「市場経済国」として認定すべきかどうかについての議論を開始した。市場経済国に認定した場合、EUは中国からの安価な輸入品に対して反ダンピング(不当廉売)措置を講じることが困難になり、域内の製造業者はより一層厳しい競争にさらされることになる。欧州委は雇用への影響などを考慮して慎重に検討を進める方針で、結論が出るのは夏以降になりそうだ。
中国政府は2001年の世界貿易機関(WTO)加盟に関する議定書の条約義務に基づき、同国を市場経済国として認定するようEUや米国などに強く働きかけている。議定書第15条はWTO加盟から15年後までに中国の「非市場経済国」としての地位は失効すると定めており、16年12月がその期限となっている。
欧州委のティメルマンス第1副委員長は会議終了後、「中国に対する市場経済国認定の是非は国際貿易やEU経済にとって極めて重要な問題であるため、あらゆる角度から検討しなければならない」と説明。WTOルールに沿って適切に対応する姿勢を強調したうえで、多角的に影響評価を行い慎重に議論を進める必要があるとの認識を示した。
EUは中国にとって最大の貿易相手であり、中国もEUにとって米国に次ぐ貿易相手となっている。米シンクタンクの経済政策研究所はEUが中国を市場経済国と認定した場合、中国からの輸入は向こう3年間で最大50%増加し、EUでは最大350万人の雇用が失われる恐れがあると試算しており、安価な中国製品との競争ですでに深刻な打撃を受けている鉄鋼や繊維などの業界団体は認定に強く反対している。