伊鉄鋼大手イルバの公的支援、欧州委が本格調査

欧州委員会は20日、イタリア政府が同国の鉄鋼最大手イルバに対して実施した公的支援策がEUの国家補助規定に違反していないか、本格調査を開始すると発表した。伊政府は南部ターラントにあるイルバの製鉄所をEUの環境基準に適合させる名目で、およそ20億ユーロに上る資金支援を行ったが、同製鉄所は深刻な環境問題を抱えたまま現在は政府の管理下に置かれている。欧州鉄鋼協会(EUROFER)をはじめとする業界団体やライバル会社は、イルバに対する公的支援が違法な国家補助にあたるとして欧州委に調査を求めていた。

ミラノに本社を置くイルバは100年以上の歴史を誇るEU3位の鉄鋼メーカー。ターラント製鉄所は約1万6,000人の従業員を擁し、欧州最大級の生産能力を持つが、同施設から排出される粉じんが周辺住民の健康被害を引き起こしたとして批判が集中。伊政府はターラントの近代化を支援するため、債務保証や低利融資などのかたちでイルバに総額20億ユーロ規模の資金支援を実施した。しかし2013年当時、イルバは親会社の不正疑惑を受けて幹部が総辞職するなど経営基盤が揺らいでおり、ターラント製鉄所は閉鎖の危機にあった。その後、同製鉄所は政府の管理下に置かれており、このため実際には公的資金が環境対策ではなく、製鉄所の運営を維持するための資金として利用されたとの疑いが浮上している。

欧州委のベスタエアー委員(競争政策担当)は「欧州の鉄鋼業界は世界規模の過剰供給と急増する輸入に直面して苦しい状況にあるが、長期的に国際競争力を強化することで困難を克服していかなければならない。EUの国家補助規定は研究開発の推進や増大するエネルギー支出の補てんなどを目的とした公的支援を認めており、一方、欧州委は反ダンピング措置や違法な輸出補助への対抗策などを通じて国際貿易の歪みを是正する取り組みを進めている」と指摘。経営難にある鉄鋼メーカーを救済するために加盟国が資金援助を行うことは許されないと強調した。

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