テロ対策で加盟国間の情報共有強化へ、緊急内相理で合意

EUは3月24日、ベルギーの連続テロを受けて緊急の内相・法相理事会を開き、旅客機の搭乗者記録(PNR)を加盟国が共有する制度の導入を急ぐことなどで合意した。イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)が欧州を標的とする次の攻撃を計画しているとされるなか、加盟国がテロ関連情報を共有して連携を強化し、再発防止に努める。

PNRは航空券の予約や搭乗手続きの際に収集される乗客の氏名、住所、電話番号、クレジットカード情報などの個人情報。米国は2001年9月の同時多発テロ以降、国内を離発着する航空会社にこうしたデータの提供を義務づけている。EUも12年に米国との間でPNRの提供に関する協定を結んだが、EUとして航空会社に搭乗者情報の提供を義務づけ、各国当局がデータを共有するシステムは構築されていない。

加盟国は昨年11月のパリ同時多発テロを受け、12月の内相理事会でEUと域外を結ぶすべての便を対象に、航空会社に旅客情報の提供を義務づける制度の導入で合意。欧州議会も法案の内容で基本合意したが、個人情報の保護が十分ではないとの意見が根強く、本会議での採択に至っていない。内相会合は欧州に広がるテロの脅威に対抗するため、早急に各国当局がPNRを共有できる制度を導入する方針で一致した。

一方、EUは今年1月、オランダ・ハーグに本部を置く欧州警察機構(ユーロポール)内に「欧州テロ対策センター」を設置した。同センターが核となってEU内での情報共有を進め、イスラム過激派組織に戦闘員として参加した欧州出身者の監視や、テロ組織の資金源根絶に向けた取り組みなどで各国当局の活動を支援するのが狙いだが、各国の警察当局や情報機関が持つ機密情報が第3者に漏れることへの懸念から、情報共有は進んでいないのが実情。内相会合は新たなテロを防ぐため、加盟国が情報収集および分析で連携を強化する方針を確認した。

欧州委員会のアブラモプロス委員(移民・内務・市民権担当)は会合後の会見で、「政治的意思や協調が欠如する場合もあるが、最も重要な問題は信頼の欠如だ」と強調。テロとの関連が疑われる人物などの情報を各国当局が共有すれば、新たなテロを防ぐことができるとの考えを示し、加盟国に連携強化を呼びかけた。

上部へスクロール