病休社員の職場復帰ルール、事業所委の関与で最高裁判断

年に6週間以上、病気休業する社員がいる場合、雇用者は本人の同意を得たうえでどうすれば職場に復帰できるかを従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)などと共同で検討しなければならない。これは第Ⅸ社会法典(SGBⅨ)84条2項に記されたルールで、「職場復帰マネジメント(Betriebliches Eingliederungsmanagement=BEM)」と呼ばれる。この条項をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が3月22日に決定を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はハンブルクにある大手物流企業が、同社の調停所(Einigungsstelle)が下した決定の無効確認を求めて起こしたもの。調停所は雇用者と事業所委員会がそれぞれ選任した同数の委員と、両者が共同選定した委員長によって構成される社内(事業所内)の決定機関である。

同社は2012年2月、病休社員のBEMを決定するために調停所で協議を開始したものの、雇用者と事業所委サイドの意見の隔たりは大きかった。9月25日の会合で委員長が事業所委の提案を支持したため、同委の案が可決された。

同案の内容は病休社員を職場復帰させるために、雇用者と事業所委の代表からなるチームを設置したうえで、同チームが◇職場復帰のための具体策を協議し雇用者に提案する◇具体策を雇用者とともに実施する――というものだった。同社はこの決定が雇用者の権限を侵害するものだとして、無効確認の裁判を起こした。

原告は1審で敗訴したものの、2審で勝訴。最終審のBAGも2審の判断を支持した。決定理由でBAGの裁判官は、SGBⅨ84条2項で事業所委に認められた権限はBEMの具体策を雇用者と共同で定めることであり、BEMを実施することではないと指摘。事業所委の代表が参加する職場復帰支援のチームがBEMの実施に加わることは雇用者権限の侵害に当たるとの判断を示した。

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