排出枠の無償配分に無効判決、欧州委に再計算を指示

欧州司法裁判所は4月28日、欧州委員会が設定したEU排出量取引制度(EU-ETS)の対象企業に対する排出枠の無償割り当てを無効とする判決を下した。EU-ETS第3期間(2013-20年)の排出上限を設定する際、加盟国から提出された不正確なデータに基づいて無償配分する排出枠が算出されたためと説明している。欧州委は10カ月以内に排出枠を算出し直す必要がある。

EUは温暖化対策の柱と位置付けるEU-ETSのテコ入れ策として、13年以降は対象施設に無償配分する排出枠を減らし、27年までに全量をオークションによる割り当てに移行することを決めている。ただし、無償排出枠の削減に伴う企業側の負担増を考慮して、排出量が特に大きく、国際競争力の低下が懸念される石油、ガス、鉄鋼、化学、繊維など164の業種に関しては、13年以降もベンチマーク方式による排出枠の無償配分が行われることになっている。

今回の判決は新制度に移行する際、欧州委が無償で割り当てる排出枠を不当に低く設定したとして、オーストリアのエネルギー大手OMV、米石油最大手エクソンモービルの伊子会社エッソ・イタリアーノ、米化学大手ダウ・ケミカルのオランダ子会社ダウ・ベネルクスなどが決定の無効化を求めて提訴していたもの。裁判所は排出枠の拡大を求める原告側の主張を退ける一方、欧州委の算出方法にも問題があったと指摘。一部の加盟国から提出された「新規の対象施設に関する矛盾したデータ」によって「本来より高い、または低い」排出枠が設定されたと結論づけ、欧州委に対して20年までに無償配分する排出枠について早急な見直しを命じた。

アナリストらは判決を受け、全体としては対象企業に無償配分される排出枠が削減されると予測している。トムソン・ロイター傘下のポイントカーボンは、無償割り当てが削減された場合、短期的にみると排出権を購入する動きが活発化して価格上昇につながる可能性があるものの、影響は限定的との見方を示している。

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