農業化学大手の米モンサントは24日、独バイエルから受けた買収提案を拒否すると発表した。提案がモンサントの企業価値を過小評価している上、財務・規制上のリスクも十分に考慮していないとしている。ただ、バイエルによる買収そのものは拒否しておらず、バイエルが買収条件を改善すれば応じる可能性がある。
バイエルのヴェルナー・バウマン社長はモンサントの声明を受けて、同社が描く買収後の事業戦略を「モンサントの取締役会が共有していることを歓迎する」としたうえで、モンサントが提示した懸念は解消できるとの考えを示した。
バイエルは株式公開買い付け(TOB)でモンサントを買収する方針。23日に公表した提案によると、買収価格は1株当たり122ドルで、全株式を取得した場合の買収額は620億ドルに達する。買収が実現すると、バイエルの農業化学部門クロップサイエンスの売上高は2倍強の231億ユーロ(15年ベース)に拡大し、同分野でダントツの世界1位となる。
農業化学業界では再編の動きが活発化している。市場環境の悪化を受けて事業規模拡大の必要性が高まっているためで、米化学大手ダウ・ケミカルとデュポンは昨年12月、合併した上で、素材、特殊製品、農業化学の3分野に分社化することで合意した。農業化学の新会社は売上高でモンサントやシンジェンタ(スイス)を抜いて最大手となる見通しだ(競合企業がM&Aを行わないことが前提)。
シンジェンタも今年2月、中国の大手化学メーカー中国化工集団(ケムチャイナ)の買収提案受け入れを表明した。業界最大手6社のうちモンサントとバイエル、独BASFの3社はこれまで業界再編の動きから取り残されていた。
バイエルは農薬分野に強く、モンサントは遺伝子組み換え(GM)種子に強い。このため事業の補完性が高く、両社の農業化学事業を統合する意義は大きい。モンサントはそれをよく理解しており、今回バイエルに対し新たな提案を促した格好だ。