高級車大手の独ダイムラーは27日、乗用車の燃費・環境性能改善に向けた新型エンジン開発への投資を約30億ユーロに拡大する発表した。同社製ディーゼル車に対しては窒素酸化物(NOx)の排出量が環境基準を大幅に上回っているとの批判があり、企業イメージが悪化していることから、これに対応した動きとみられる。同社はまた、EUが新たに導入する排ガス検査基準をクリアしたディーゼル車を他社に先駆けて発売することなども明らかにした。
ダイムラーに対しては米法律事務所のハーゲンス・バーマンが同社製車両の所有者を代表して2月に集団訴訟を起こした。同社のディーゼル技術「ブルーテック」を搭載した車両が排出するNOxの量は米国の環境基準を大幅に上回っていると批判している。
米司法省はこれを受けてダイムラーに内部調査を要求。同社は自社製品の認証手続きで不正がなかったかを調べている。
ダイムラーは乗用車エンジンの燃費・環境性能向上に26億ユーロを投資する方針を打ち出していたが、これを約30億ユーロに引き上げ、同取り組みを強化する。
EUではフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題を受けて、2017年9月から実際に自動車が道路を走る際の排ガス量を測定する「実走行排ガス試験(RDE)」が導入される。RDEでは実際の走行を模倣して屋内で行われる台上試験に比べて有害ガスの排出量が多くなることから、台上試験で基準値を満たした車両でもクリアできずに不合格となる可能性がある。
ダイムラーは新開発の4気筒ディーゼルエンジン「OM654」を搭載した新型車「E220d」のRDE試験を技術監査法人デクラに委託した。ダイムラーによると、NOxの排出量はすべての走行条件下で基準値(走行1キロメートル当たり80ミリグラム以下)をクリア。低い外気温での走行試験では同13~21ミリグラムにとどまった。
同社はこのほか、ガソリン車にも排ガスフィルターを搭載する方針を明らかにした。フィルター搭載のガソリン車を販売するのは同社が初めて。2017年式の旗艦モデル「Sクラス」から順次、投入していく。