EUと米国は2日、犯罪捜査を目的とした個人情報の移転に関する新たな取り決めである「アンブレラ協定」に署名した。テロや組織犯罪との関与が疑われる人物の個人情報を欧米間で共有する際、双方がより高いレベルの保護水準を確保することでプライバシー侵害を防止し、同時に円滑なデータ移転を可能にして捜査協力を促進する狙いがある。協定の発効には欧州議会の承認が必要で、最終的に修正が加えられる可能性もある。
EU議長国オランダのファン・デル・シュテイル司法相、欧州委員会のヨウロヴァ委員(法務・消費者・男女平等担当)とリンチ米司法長官がアムステルダムで会談し、新協定に署名した。
EUと米国は2月、個人情報の移転に関するEU・米国間の取り決めである「セーフハーバー協定」に代わる新協定「プライバシー・シールド」の内容で基本合意した。これはEU市民の個人情報を扱う米企業に対してより厳格なプライバシー保護を義務づけるほか、米国の公的機関による個人情報へのアクセスも厳しく制限する内容になっている。今回のアンブレラ協定はテロなどの犯罪捜査や訴追を目的とする個人情報の移転に関するもので、プライバシー・シールドとは別の枠組みになる。
昨年9月に欧米間で基本合意した内容によると、新協定ではEU市民に対する保護措置が強化され、個人情報の扱いに関してプライバシーが侵害された場合、米国の裁判所に提訴する権利が認められる。このほか、米当局がEU市民の個人情報にアクセスする際は◇データの利用目的を明確にする◇データ保持期間をあらかじめ設定する◇他の公的機関にデータを移転する場合は事前に本人の承諾を得る――などが盛り込まれている。