ハンガリー政府は5日、中東などからの難民や移民の流入問題をめぐり、EUが加盟国に難民の受け入れ分担を義務づける措置の是非を問う国民投票を10月2日に実施すると発表した。ハンガリーは一貫して難民の受け入れ分担に反対しており、オルバン首相は2月に国民投票の実施を表明していた。英国がEU離脱を決めた直後に国民投票の実施スケジュールを打ち出すことで、EU執行部や独仏などを揺さぶり、自国の発言力を高める狙いがあるとみられる。
欧州に流入する難民や移民の多くはトルコからギリシャに渡り、バルカン半島を北上してドイツなどの西欧諸国を目指す。ハンガリーはこうした「バルカンルート」上に位置し、昨年は年初から秋までに約40万人が入国。政府は増え続ける難民らの流入に歯止めをかけるため、8月末以降、隣国のセルビアやクロアチアとの国境にフェンスを設置して違法入国を厳しく取り締まっている。
ハンガリー政府はEUの難民受け入れ分担策について、加盟国への主権侵害にあたるうえ、難民を装ったテロリストの流入を許すことになると主張している。大統領府によると、国民投票では「ハンガリー議会の承認なしに、EUが非ハンガリー国民に対し、ハンガリーへの強制的な移住を命じることを容認できるか否か」を問う。
EUは昨年9月、ギリシャなどに到着する難民16万人の受け入れを加盟国で分担することを決めたが、ハンガリーやスロバキアなど東欧4カ国が反対を表明した。分担案を支持した国でも実際の受け入れは進んでいないのが実情で、7月1日現在の受け入れ数はEU全体で約2,800人にとどまっている。