欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/7/18

EU情報

英メイ新首相が就任、主要閣僚に離脱派起用

この記事の要約

EU離脱を決めた英国で、キャメロン首相が13日に辞任し、与党・保守党のテリーザ・メイ新党首(59)が首相に就任した。同国でサッチャー氏以来の女性首相となるメイ新首相は、EU離脱を円滑に進めるという重責を担うことになる。外 […]

EU離脱を決めた英国で、キャメロン首相が13日に辞任し、与党・保守党のテリーザ・メイ新党首(59)が首相に就任した。同国でサッチャー氏以来の女性首相となるメイ新首相は、EU離脱を円滑に進めるという重責を担うことになる。外相、離脱交渉担当相など主要閣僚には離脱派を起用した。

キャメロン氏は6月23日に実施された国民投票で英国のEU離脱が決まった直後に、辞意を表明した。これを受けて保守党は次期首相を決める党首選を開始。7日に行われた2回目の投票で女性のメイ氏(内相)、アンドレア・レッドソム氏(エネルギー担当閣外相)が最終候補に残り、9月9日に決選投票の結果が発表される予定だった。しかし、レッドソム氏が11日に突然、撤退を表明。メイ氏の当選が決まった。これを受けてキャメロン氏は同日に前倒しでの辞任を発表し、新首相が予定より約2カ月早く決まった。

党首選の決選投票では、メイ氏が圧倒的に優勢とみられていた。レッドソム氏は情勢が不利となっていることに加え、子供がいないメイ氏より「母親である自分の方が首相にふさわしい」という発言が差別的として猛反発を浴びたことなどから勝機はないと判断し、選挙戦からの撤退を決めた。

メイ氏は国民投票でEU残留を支持していた。しかし、党首選に出馬してからは、投票結果を尊重することを明言。後戻りはないとして、残留に向けた2度目の国民投票実施をきっぱり否定してきた。次期首相就任が決まった11日午後には、「ブレグジット(英国のEU離脱)は文字通りブレグジットだ」と述べ、EUとの離脱交渉を成功に導く決意を示した。

注目されていた組閣では、新設の離脱交渉担当相に離脱派の大物議員であるデービッド・デービス元欧州担当相、外相に離脱派の中心人物だったボリス・ジョンソン前ロンドン市長を任命。EUなどとの新たな貿易協定の交渉を担う新設の国際貿易相にも離脱派のフォックス元国防相を起用した。

財務相には残留派のフィリップ・ハモンド前外相、内相には同じく残留派のアンバー・ラッド前エネルギー・気候変動相が就任した。離脱の是非をめぐって生じた保守党内の亀裂を修復するため、両派に目配りした布陣となった。EUとの交渉役となる3閣僚の離脱派起用は、交渉に強硬姿勢で臨む決意を示した格好だ。

英国とEUの離脱交渉は、英政府が離脱を正式に通告してから開始される。EUは即座に通告するよう求めているが、メイ首相は交渉戦略を練るには時間が必要として、年内には通告しない方針を示しており、交渉開始は17年となる見込み。メイ新首相は就任後にユンケル欧州委員長、独メルケル首相、仏オランド大統領らと電話で協議し、離脱交渉開始まで時間がかかることへの理解を求めたが、EU側は早期の離脱通告を求める姿勢を崩していない。