欧州委員会は7日、世界の海運大手14社がコンテナ貨物事業をめぐる競争上の懸念を払拭するため、自主的に打ち出した運賃を引き上げる際の慣行に関する改善策を受け入れたと発表した。利害関係者から寄せられた意見をもとに市場分析を行った結果、一連の措置によって料金面の透明性が高まり、協調的行為により公正な競争が阻害される恐れはなくなると判断した。欧州委は各社に対する調査を打ち切り、今後3年間にわたり、法的拘束力のある確約として改善策の実施を義務づける。
問題となっていたのは、EUと他の地域を結ぶ航路を定期的に運航するコンテナ船を運営する海運会社が、運賃引き上げをウェブサイトや業界紙を通じて予告する慣習。欧州委は業界最大手のAPモラー・マースク(デンマーク)をはじめとする14社が、2009年に開始した同行為を通じて互いに値上げの幅や実施時期を知らせ合い、一斉に同規模の値上げを行っていた疑いがあるとして、13年11月に本格調査を開始した。
EU競争法は価格協定などのカルテル行為を禁止しているが、外航定期貨物船事業については各社が「定期船同盟」を結成し、価格や配船、運航スケジュールなどについて協定を結ぶことを例外的に容認してきた。しかし、08年10月から同制度が廃止され、禁止対象となっている。欧州委は14社が同制度の廃止に伴い、翌年から事前に値上げを公表するシステムに切り替え、引き続き事実上の価格カルテルを結んでいたとの見方を強めていた。
欧州委の調査対象になっていたのはAPモラーのほか、独ハパックロイド、仏CMA-CGM、シンガポールのネプチューン・オリエント・ラインズ、中国遠洋運輸集団社、韓国の現代商船社、日本郵船、商船三井など。従来の「海上運賃一括値上げ(GRI)」と呼ばれる価格公表のシステムでは、値上げ実施日の3~5週間前に、輸送コンテナ1単位(TEU)当たりの値上げ額、影響を受ける航路、実施予定日が公表されていたが、欧州委は顧客に対する情報提供が不十分で透明性に欠けると指摘していた。
14社は制裁を回避するため、運賃の引き上げ幅または引き上げ率のみの公表や通知を廃止し、代わりに◇最終的な運賃を構成する5つの要素(基本運賃、燃料割増料金、保安対策費、コンテナ取扱い料金、繁忙期割増料金)を公表する◇その金額を一定期間、上限価格として拘束力を持たせる◇値上げ実施日の31日以上前に価格変更を公表しない――という改善策を提案。欧州委がこれを受け入れた。