欧州委、非ETS部門の排出削減目標を提示

欧州委員会は20日、EU域内排出量取引制度(EU-ETS)の対象外となっている産業部門について、2030年を達成期限とする国別の削減目標を提案した。30年までにEU全体で温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも40%削減するとの目標を達成するため、非ETSセクターについても拘束力のある削減目標を設定し、すべての産業部門で低炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させる。秋以降、欧州議会と閣僚理事会で欧州委の提案について検討する。

欧州委がまとめた14年の統計によると、EU内では運輸、建設、農業、廃棄物処理など非ETSセクターからの温室効果額排出量が全体の約60%を占めている。EUは30年までの中期目標を達成するための具体策として、ETSの対象となっている工業・エネルギー部門については域内全体で05年比43%の削減、対象外の非ETSセクターについても同30%の削減を求める方針を打ち出している。

欧州委が今回提案したのは、「努力分担の決定(Effort Sharing Decision)」と呼ばれる非ETSセクターを対象とする国別の削減目標。各国の1人当たりGDPをベースに、土地利用変化と林業分野における温室効果ガス吸収量などを考慮して、05年を基準に21-30年に達成すべき削減目標を設定している。国別にみると、ルクセンブルクとスウェーデンが最大の40%で、デンマークとフィンランドが39%、ドイツは38%、フランスも37%と高い削減目標が設定されている。一方、東欧諸国ではポーランドとハンガリーがともに7%、ルーマニアは2%、ブルガリアは0%に抑えられている。

なお、今回の提案にはEU離脱を決めた英国の削減目標(05年比で37%減)も含まれている。英国の離脱後もEU全体として削減目標を維持する場合、同国の分担を残る27カ国で穴埋めしなければならないため、東欧諸国などが反発するのは必至。この点について、欧州委のカニェテ委員(気候行動・エネルギー担当)は「法的には国民投票の結果によって何も変わっていない。英国は引き続きEUのメンバーであり、加盟国が持つすべての権利を有し、義務を負う」と強調。そのうえで、離脱交渉の行方が見えない現状に触れ、「(現時点で)できることは何もない。何か変化が生じた場合はそれに適応するしかない」と述べた。

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