欧州委員会が米アップルやアマゾン・ドット・コムなどの多国籍企業に対するEU加盟国の税優遇措置について調査を進めている問題で、米政府が欧州委に対する批判を強めている。米財務相は24日公表した白書で、欧州委は多国籍企業に対する「合法的な課税措置」について「権限を超えて」調査を行っており、対象も「米企業に偏っている」などと批判。最終的に優遇措置が違法な国家補助にあたると判断した場合、欧州委は加盟国に多額の追徴課税を命じる可能性があるため、財務相は同委に対し、税逃れの防止に向けた国際的な取り組みを損ないかねない「一方的な」行動を控えるよう求めている。
欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、2014年6月に本格調査を開始した。このうち米大手コーヒーチェーンのスターバックスと欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズの金融子会社に対する優遇措置については昨年10月、「違法な国家補助」と認定。同措置を適用していたオランダとルクセンブルクに最大3,000万ユーロの追徴課税を命じている。
財務相は白書で、米国に本社を置く複数の多国籍企業がEU加盟国の税務当局と課税措置に関する取り決め(タックスルーリング)を交わし、納税額を低く抑える手法を導入していた事実を認めたうえで、こうした税慣行は国際的なルールに基づいておりこれまで広く認められてきたと主張。「確立された制度」に対する欧州委の「新たなアプローチ」により、EU加盟国が多国籍企業に適用してきた合法的な税優遇措置の正当性が疑われていると指摘し、欧州委は「超国家的な税務当局」の役割を担おうとしていると批判している。
財務相のスタック副次官補は声明で、「欧州委の調査は米国に大きな影響を与える可能性がある。とりわけ同委が加盟国に追徴課税を命じた場合、米企業は極めて深刻な打撃を受け、結果的に米国の納税者が負担を強いられる恐れがある」と警告した。
これに対して欧州委は声明を発表し、EUの規定は加盟国が特定の企業に対して税優遇措置を適用することを禁じており、違法な課税措置を取り締まることですべての企業を公平に扱うことが調査の目的だと強調。同委の報道官は「EUルールは域内で事業展開するすべての企業に公平に適用される。米企業を調査の標的にしている事実はない」と反論した。