EU統計局ユーロスタットが8月31日発表した同月の消費者物価統計(速報値)によると、ユーロ圏の消費者物価指数上昇率(インフレ率)は前年同月比0.2%で、前月と同水準だった。インフレ率がプラスとなるのは3カ月連続。しかし、依然として低水準にあることから、欧州中央銀行(ECB)に追加の金融緩和を求める圧力が強まりそうだ。
分野別ではエネルギーがマイナス5.7%と下落が続いている。工業製品は0.3%、サービスは1.1%の幅で上昇した。価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いた基礎インフレ率は0.8%だった。
ECBは3月、デフレ回避と景気下支えのため、追加の金融緩和を決定。国債などを買い取る量的緩和について、買い取り規模を月600億ユーロから800億ユーロに拡大し、新たに社債を買い入れ対象に含めた。また、民間金融機関が余った資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)のマイナス幅を0.3%から0.4%に拡大。主要政策金利も0.05%から0%に引き下げた。
しかし、原油安やユーロ圏の景気回復の足取りが重いことで、物価を大きく押し上げるには至っていない。8月のインフレ率は市場予測の0.3%を下回り、ECBが上限目標値とする2%前後を大きく割り込んでいる。ECBが金融政策で重視する基礎インフレ率も前月の0.9%を下回り、3カ月ぶりに縮小した。
このため市場では、ECBが量的緩和の拡充に踏み切るとの観測が浮上している。ただ、9月8日に開く次回の定例政策理事会で決めるかどうかについては、見方が大きく分かれているようだ。