欧州委員会は1日、ロシア携帯電話サービス大手のビンペルコムと香港の複合企業ハチソン・ワンポアがイタリアの携帯電話サービス事業を統合することを承認したと発表した。欧州委は同計画に難色を示していたが、両社の資産売却によって仏イリアッドが伊携帯電話サービス市場に参入することから、競争上の懸念が払しょくされたと判断し、認可に踏み切った。
両社は2015年8月、ビンペルコム傘下のウインドとハチソン子会社のH3Gを合併し、折半出資の合弁会社を設立することで合意した。伊携帯電話サービス市場でウインドは3位、H3Gは4位。誕生する新会社はテレコムイタリア、ボーダフォンを上回って首位に浮上する。
欧州委は3月、イタリアで自前の通信ネットワークで携帯電話サービスを展開する事業者が4社から3社に減り、競争が阻害される恐れがあるとして同計画に疑義を示し、本格的な調査を行って可否を最終判断する方針を打ち出していた。
これに対して両社は7月、ウインドとH3Gが第3世代(3G)、第4世代(4G)向け周波数帯の一部をイリアッドに売却するほか、数千カ所の小型基地局を売却または共有することなどで合意。これによってイリアッドが伊4番目の携帯電話サービス会社として同市場に参入することから、その実行を条件に欧州委の承認を取り付けた。
EU通信市場の健全な競争の維持を重視する欧州委は、同分野の合併・買収の可否を厳しく審査しており、ハチソンがスペイン通信最大手テレフォニカの英携帯電話サービス部門O2を買収し、傘下の英同業スリーと統合する計画を5月に阻止した経緯がある。今回の案件も認可されない可能性がささやかれていたが、イリアッドとの取引で問題が完全に解消されるとして容認した。