欧州委員会は15日、課税逃れ防止に向けた取り組みの一環として、多国籍企業や富裕層による租税回避を助長している可能性のあるEU域外国・地域のリストを公表した。今回のリストをもとに、タックスヘイブン(租税回避地)の疑いが強い国・地域を特定して課税制度を詳しく検証し、2017年末までに租税回避対策に非協力的な国・地域を列挙したEU共通の「ブラックリスト」を作成する。
EUではこれまで加盟国が独自に非協力やタックスヘイブンのリストを作成し、対象となる税法域の監視を行ってきた。しかし、タックスヘイブンを使った富裕層らによる課税逃れの実態が明らかになった「パナマ文書」問題を受け、6月にEU共通の判断基準に基づくタックスヘイブンのブラックリストを策定することで合意。欧州委が後発開発途上国を除く165のEU域外国・地域を対象に、EUとの経済関係、海外直接投資や金融取引の規模、汚職や規制レベルなど全体的なガバナンス状況、税の透明性、優遇税制、法人税免除やゼロ税率の適用について検証し、評価結果を「スコアボード」として公表した。
6項目の指標から租税回避を助長している可能性があると判断されたのは、合わせて81カ国・地域。タックスヘイブンとして広く知らせているパナマ、バミューダ諸島、ケイマン諸島、香港などと並んで米国、カナダ、日本、オーストラリア、中国、インド、ブラジルなどがリストに含まれている。
今後の手続きとしては、EU加盟国の代表で構成する専門委員会がスコアボードをもとに、年末までに課税制度を精査する国・地域を選定。来年1月から審査に着手し、2017年末までにEU共通のブラックリストを作成する。ただ、タックスヘイブンに対するスタンスは加盟国間でばらつきがあるため、リスト作りは難航も予想される。