ガソリン車やディーゼル車など温室効果ガスを排出する乗用車を2030年までに、欧州連合(EU)域内で販売できなくする政策の検討を欧州委員会に促す決議を、独16州の政府代表で構成される連邦参議院(上院)が9月23日に行っていたことが分かった。決議には2大政党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)が政権を握る州が賛成票を投じており、自動車の排ガス規制でドイツが将来、強硬な立場へと転換する可能性が出てきた。週刊誌『シュピーゲル』が報じた。
同院は決議で、EU加盟国の車両・燃料税のあり方を見直し、遅くとも30年からはエミッションフリーの無公害車のみが新規登録されるようにすることを、欧州委に提言した。背景には20年以降の温暖化対策を定めた「パリ協定」が昨年12月に採択され11月に発効することがある。決議は「EU域内の交通セクターで2050年までにエミッションフリーをほぼ実現する」とした欧州委の目標を達成するためには30年までに新車をすべて無公害車とすることが必要だと強調している。
ドイツのアレクサンダー・ドブリント交通相(CSU)は同決議について「今後14年でエンジン車(新車)を全廃するのは非現実的だ」と述べ、否定的な見解を表明した。閣僚で同決議を支持するのはバーバラ・ヘンドリックス環境相(SPD)に限られており、現政権が連邦参議院と同様の要求をEUに突きつける可能性はほとんどない。
ただ、フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題発覚以降、ディーゼル車の市内乗り入れ制限を求める声が大都市で強まるなど、エンジン車を取り巻く環境は悪化している。また、来年秋の連邦議会(下院)選挙でエンジン車の30年販売禁止を提唱する環境政党・緑の党が政権入りすることは十分にあり得る。
ドイツの自動車メーカーは大型車に強いことから、ドイツ政府はこれまで車両の排ガス規制に消極的な立場をとってきた。だが、地方レベルでは主要政党も排ガスに厳しい姿勢を取るようになっており、将来の政権が舵を大きく転換する可能性は排除できない状況だ。