EU加盟国は10日開いた漁業相理事会で、バルト海の2017年の漁獲規制について協議し、バルト海西部に棲息するタラの総漁獲可能量(TAC)を前年比56%削減することで合意した。欧州委員会は「持続可能性の早期回復」を図るため、前年比88%の削減を提案していたが、一部加盟国が強く反発。最終的に、娯楽目的の漁獲を規制する代わりにTACの削減幅を緩和する妥協案が成立した。
EUは周辺海域で捕獲されるすべての魚種について、遅くとも20年までに資源を減らすことなく持続的に達成できる最大の漁獲量(最大持続可能生産量)を確保するとの目標を掲げている。バルト海西部に棲息するタラのTACは今年1万2,720トンに設定されているが、欧州委員会は諮問機関である漁業科学技術経済委員会(STECF)の勧告に基づき、17年は88%減の1,588トンとすることを提案した。しかし、デンマークなどが大幅な削減に強く反対したため、娯楽目的の漁獲を1人当たり最大で1日5匹(産卵期は3匹)に制限するルールを導入する代わりに、TACの削減幅を56%に緩和して5,597トンとする妥協案を提示。全会一致で同案が承認された。
科学者らはバルト海で持続可能なタラ漁を実現するため、漁獲量を9割削減するよう求めており、自然保護団体などからは今回の決定に対する不満の声が上がっている。国際海洋保護団体オセアナ(Oceana)欧州支部の代表は声明で「乱獲によって激減したバルト海西部のタラの個体数を健全な水準に戻すという野心が欠如している。引き続き過剰な漁獲を容認するEUの決定は、水産資源を危機にさらすだけでなく、タラ漁に依存するバルト海周辺国の漁業従事者への配慮も欠いたものだ」とコメントしている。