ドイツのグローエ連邦保健相(キリスト教民主同盟)が処方薬の通販禁止に向けて法案作成に乗り出したことが28日、明らかになった。同国の処方薬定額販売ルールは欧州連合(EU)法に違反するとした欧州司法裁判所(ECJ)の判決を受けた措置で、国内の薬局が国外の医薬品ネット販売事業者との競争で不利にならないようにすることが狙い。地方紙『ライニッシェ・ポスト』が報じ、保健省が追認した。
ECJは19日、オランダのネット薬局ドックモリスがドイツで行う処方薬の割引販売をめぐる係争で、処方薬の患者負担額(薬局での販売価格)を固定するドイツの法規制は域内での物の自由移動を定めたEU法に抵触するとの判決を下した。これにより、ドイツ以外のEU加盟国に拠点を置く通販は処方薬の価格を同国で自由に設定できるようになった。一方、ドイツの薬局は薬事法の規定により固定価格での販売を引き続き義務づけられることから、競争上不利な立場に置かれることになる。
ECJは2003年の判決で、一般医薬品(大衆薬)の通販禁止はEU法に違反するとしたものの、処方薬については健康安全上の理由から通販禁止が可能だとの見解を示唆した。保健相はこれを根拠に、処方薬の通販禁止を法制化する考えだ。バイエルン州政府も同様の法案の作成に向けて動いている。
ただ、処方薬の販売価格固定ルールを廃止することを通しても国外通販と国内薬局の不平等を解消できることから、グローエ保健相の取り組みには批判が出ている。連立与党・社会民主党(SPD)のラウターバッハ院内副総務は「ドイツの競争の欠如を批判したECJの判決に競争を一段と制限する法的な措置で対応しようとしている」と指摘。公的健康保険の頂点団体であるGKVのフォン・シュタッケルベルク副会長も「21世紀に1つの業界全体をネット通販から排除するのは時代にそぐわない」と明言した。
ECJ判決を受けて、ドックモリスにはドイツの公的健保組合から割引契約の問い合わせが多数、入っている。割引契約を通して薬剤費の健保負担を軽減できるためで、健保は処方薬の通販禁止に反対の立場だ。