EU・米のTTIP交渉が長期中断も、トランプ政権誕生で悲観論浮上

EUは11日、ブリュッセルで通商担当相会合を開き、米大統領選でのトランプ氏の勝利がEUと米国の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)に及ぼす影響について協議した。トランプ氏は自由貿易に反対する立場を鮮明に打ち出しており、EU内ではTTIP交渉が長期間にわたり中断されるとの見方が広がっている。

欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は会議後の会見で、「TTIPはかなり長期にわたって冷凍庫の中に置かれることになるだろう。そして解凍されたときに何が起こるかは様子を見るしかない」と発言。「われわれは現実的になる必要がある。交渉の再開には長い時間がかかるだろう」と述べた。

トランプ氏は選挙期間中に保護主義的な発言をくり返し、米国がカナダやメキシコと結んでいる北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや、米国と日本を中心とする環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を公約に掲げていた。このためEU高官らは、トランプ政権にとってNAFTAやTPPの方が優先度が高く、TTIP交渉は後回しにされる公算が大きいとの見方を示している。

EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指して2013年7月にTTIP交渉を開始した。しかし、投資家保護の仕組み、食品や自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって交渉が難航。双方はオバマ米大統領の任期が切れる来年1月までの妥結を目指していたが、EU内で反対論が根強く、オバマ政権下での合意を事実上、断念した形になっている。

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