炭素製品大手の独SGL(ヴィースバーデン)は10日、米ワイオミング州エバンストンにある炭素繊維工場を三菱レイヨンに売却することで合意したと発表した。同社は黒鉛電極価格の下落を受けて業績が悪化したことから、事業整理に取り組んでおり、昨年10月にも電極事業を昭和電工に完全売却することを取り決めた。三菱レイヨンとの取引の規模は明らかにしていないものの、SGLは2016年の利益がやや押し上げられるとしている。4月の売却手続き完了を見込む。
SGLは炭素繊維をこれまで、エバンストン、米ワシントン州モーゼスレイク、英ミュアー・オブ・オードの3工場で生産してきた。ミュアー・オブ・オード工場では生産ラインの近代化により、これまでエバンストン工場でしか生産できなかった2万4,000本の長繊維(フィラメント)からなる炭素繊維(24K)を製造できるようになったことから、エバンストン工場を売却。世界の生産網を効率化する。
三菱レイヨンは今回の買収により、北米の炭素繊維事業を強化する。同社の炭素繊維生産能力は1,000トン以上拡大することになる。SGLから取得する工場の敷地内に新たな生産設備を設置することを視野に入れている。