米アップルは12月19日、欧州委員会がアイルランド当局に対し、同社への最大130億ユーロに上る追徴課税を命じたことを不服として、EU司法裁判所の一般裁判所に提訴した。欧州委がアップルに対する税優遇措置を特定企業への違法な「国家補助」と認定した問題では、アイルランド政府も11月に同裁判所に訴えを起こしており、対立は長期化する見通しだ。
問題となっているのは、アイルランドの税務当局が2003年から14年にかけてアップルに適用していた優遇措置。同国の法人税率はEU加盟国で最も低い12.5%だが、アップルは現地子会社が製品を仕入れ、世界各地に販売した形にして米国以外の利益がアイルランドに集中するよう会計処理を行い、税負担を軽減していた。欧州委によると、同社に適用された実際の税率は03年の1%から14年には0.005%まで引き下げられていた。同委は一連の調査結果に基づき、8月末にアイルランドに対してアップルへの追徴課税を命じた。
欧州委は19日に公表した調査内容に関する文書で、アップルがEU域内で計上した利益をアイルランドの欧州本社に配分することを認めた同国の決定を問題視。こうした優遇策はアップルを「選択的」に扱ったもので、特定の企業に対する不当な優遇措置を禁止したEUの国家補助規定に違反すると説明している。
アップル側はこれに対し、アイルランド当局との取り決めは他社にも適用されてきた優遇税制の一環であり、同国や米国の税法を順守していると強調。違法な国家補助との判断はアップルを「狙い撃ち」した「制度の恣意的な運用」であり、欧州委は「課税政策に関する国際的な共通認識や、アイルランドおよび米国の税法を無視し、遡及的に規則を変更しようとしている」と反論している。
アイルランド政府も声明を発表し、欧州委はアイルランドの税法やアップルの事案に関する事実関係を見誤っており、加盟国の主権に介入しようとしていると批判した。