EUの銀行監督機関である欧州銀行監督機構(EBA)のエンリア議長は1月30日、EUが域内銀行の不良債権問題に対応するため、公的資金を活用して不良債権の買い取り、処理を進める「資産管理会社(AMC)」を創設する必要があるとの見解を示した。巨額の不良債権が金融システムを圧迫し、貸し渋りを招いて経済成長の足かせとなっていることを受けたもので、EU版の「バッドバンク」(不良債権の受け皿機関)を設立する形となる。
EUの銀行が抱える不良債権は総額1兆600億ユーロ。不良債権比率は平均5.4%で、日米の3倍を超える。4分の1に相当する2,760億ユーロがイタリアに集中しているが、他の国でも状況は深刻で、10カ国で不良債権比率が10%台に達している。
エンリア議長はルクセンブルクで行った講演で、同問題を緊急に解決する必要があるとして、EUが不良債権の受け皿機関を創設する構想を提案した。AMCが公的資金を使って銀行から不良債権を買い取り、3年後をめどに売却するという内容だ。
EUでは多額の不良債権を抱える銀行がバッドバンクを設立した例がある。また、スペインとアイルランドは金融危機に陥った際、公的資金を活用したバッドバンクを創設し、問題がある銀行の不良債権処理を進めた。しかし、不良債権をEU規模で処理するための機関はない。
エンリア議長は不良債権処理が進んでいない背景に、買い取り価格が低すぎるため銀行が売却に消極的なことがあると指摘。AMCは実態に沿った適正価格で不良債権を買い取る必要があるとしている。
ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)のレグリング総裁は同日、この構想への支持を表明。最大2,500億ユーロに上る不良債権の買い取りを目標にするべきとの見方を示した。
ただ、EBAには同計画を実行に移す権限がなく、実現にはEUと加盟国が動くことが必要となる。加盟国ではドイツなどが民間銀行を公的資金で支援することに批判的なため、構想が実現するかどうかは不透明だ。