ティッセンクルップがブラジル粗鋼工場売却

鉄鋼系複合企業の独ティッセンクルップは22日、ブラジルの粗鋼工場CSAをアルゼンチン鉄鋼大手のテルニウムに売却することで合意したと発表した。同工場はすでに手放した米国の圧延工場とともに経営の巨大な圧迫要因となっていた。CSAの売却により、失敗に終わったアメリカ大陸鉄鋼事業からの撤退が完了する。

CSAを15億ユーロで売却する。これに伴い減損損失9億ユーロを計上するものの、財務の重要指標であるギアリング比率(自己資本に対する他人資本の比率)は改善するという。取引の成立には独禁当局の承認が必要で、ティッセンクルップは9月末までの売却手続き完了を見込む。

ティッセンクルップは2006年、ブラジルに粗鋼工場、米国に圧延工場をそれぞれ建設することを決定した。ブラジルで生産した粗鋼を米工場で自動車用の高級鋼材などに加工。NAFTA(北米自由貿易協定)圏で拡大する需要を取り込む意向だった。

だが、ブラジルの通貨高と鉄鉱石価格の高騰を受けてブラジル工場は採算が悪化し、米国工場も事業が低迷。両工場の建設コストが大幅に膨らんだこともあり、売却手続きを開始し、米工場については14年にアルセロール・ミタルと新日鉄住金のコンソーシアムへと売却した。CSAと米国の圧延工場でティッセンクルップが計上した純損失は約80億ユーロに上る。

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