欧州委員会は14日、EUの意思決定手続きの改正案を発表した。遺伝子組み換え(GM)作物の認可など意見が分かれる案件で、加盟国が責任を回避し、欧州委が最終判断を迫られるケースがあることを問題視したもので、多数決で決まりやすい制度に改める。
改正を提案したのは、欧州委がEU規則、指令などの実施について加盟国の代表で構成する専門委員会に意見を求める「コミトロジー」と呼ばれる手続きに関するルール。同手続きはGM作物、農薬の認可、反ダンピング措置発動の可否などで適用される。加盟国は対象案件を多数決で決めるが、賛成、反対とも過半数に達しない場合は欧州委が最終判断することになっている。
欧州委がルール見直しに乗り出したのは、大きな論争を巻き起こしている案件で、加盟国の多くが棄権し、投票が議決に必要な過半数を割り込み、欧州委に最終決定の責任が押し付けられるケースが少なくないことを受けたもの。波紋を呼ぶ決定をあたかも欧州委が強行したかのように受け止められ、反EUの動きが一段と強まるのを防ぐ意図がある。
欧州委の提案は、専門家委員会による単純多数決方式での採決で決着しなかった案件を特定多数決(加盟国の人口に応じて票数を割り当てる投票制度)で決める異議申し立て委員会(同じく加盟国の代表で構成)での採決について、棄権を票として勘定しないようにすることで、賛否のどちらかに決まりやすくするという内容。異議申し立て委員会に各国の閣僚が参加し、政治決着できるようにすることも提案した。さらに、意思決定のプロセスを透明化するため、現在は非公表となっている異議申し立て委員会での採決の詳細を公開することも盛り込んだ。同提案は加盟国、欧州議会の承認が必要となる。
加盟国の採決で結論が出ず、欧州委に決定が委ねられたケースは2015、16年の2年間で17件に上る。昨年6月には、米農薬大手モンサントが開発した除草剤「ラウンドアップ」の主成分で、発がん性が疑われる「グリホサート」の認可期間延長の可否をめぐり、反対票を投じたのが1カ国だけだったにもかかわらず、ドイツなど7カ国が棄権した結果、承認が得られず、欧州委の判断で延長が決まった。