欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/2/27

EU情報

ギリシャが構造改革受け入れ、追加融資実施へ前進

この記事の要約

ギリシャ政府は20日に開かれたユーロ圏19カ国の財務相会合で、EUによる追加融資を取り付けるため、財政再建に向けた追加の構造改革を実施することを受け入れた。これを受けてEU、国際通貨基金(IMF)など債権団は近日中にギリ […]

ギリシャ政府は20日に開かれたユーロ圏19カ国の財務相会合で、EUによる追加融資を取り付けるため、財政再建に向けた追加の構造改革を実施することを受け入れた。これを受けてEU、国際通貨基金(IMF)など債権団は近日中にギリシャに入り、改革の詳細について協議する。

財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)によると、構造改革は年金、税制、労働市場に関するもの。債権団とギリシャ政府は具体案を協議することで合意した。

債務危機が続くギリシャは、7月に約70億ユーロの債務返済期限を迎えるため、総額860億ユーロに上る第3次支援に基づく追加融資を必要としている。しかし、債権団が第1、2次を含む支援の条件として求めている財政再建の進展状況に関する第2次審査をパスしなければならない。この審査が難航し、追加融資が見送られている。

審査が遅れているのはEU、IMF、ギリシャで財政再建の進め方をめぐって意見が対立しているためだ。ギリシャの基礎的財政収支(プライマリーバランス)を18年までにGDP比3.5%の黒字にするという目標について、ユーロ圏とギリシャはすでに合意した改革を実行すれば達成できるとしているのに対して、IMFはさらなる改革を進めなければ同1.5%の黒字化しか実現できないと主張。これにギリシャが激しく抵抗している。

また、第1、2次の金融支援に加わったものの、3次支援参加を見送っているIMFは、債務問題の抜本的な解決には債務の大幅な減免が必要で、これが決まらなければ参加しない方針を打ち出している。この債務減免には、ギリシャが当然のことながら同意しているものの、ドイツを中心とする他のユーロ圏諸国は国内世論の反発を恐れ、反対している。ドイツはギリシャへの支援継続にはIMFの参加が必要と主張しており、これが追加融資実施の障害にもなっている。

今回の合意は、財政再建に向けた追加の緊縮策には断固として応じない姿勢を堅持しているギリシャに配慮しながら、IMFの要求も組み入れた格好だ。デイセルブルム議長は記者会見で「緊縮から構造改革重視にシフトした」と説明。さらなる痛みを伴う新たな財政緊縮策をギリシャに強いる代わりに、追加の構造改革を求めることで、景気底上げに向けた財政措置を講じる余地が生まれ、財政健全化が進むとの見方を示した。

さらにデイセルブルム議長は、IMFが構造改革の内容を見極めた上で、財政健全化の「持続性」を改めて検証し、なお債務減免が必要かどうかを判断することを明らかにした。IMFによる支援参加の道筋も開いた形となる。

すでにギリシャは厳しい財政緊縮策を導入していることから、新たな緊縮に徹底抗戦の構えを示していた。政府の報道官は同日、「いかなる緊縮も伴わない合意に至ることができた」と成果を強調した。また、政府筋はロイター通信などに対して、新たな構造改革は即時実施を求められず、第3次支援終了後の2019年1月1日付で実施する見通しであることを明らかにした。これによって議会の承認が取りつけやすくなると見込んでいる。

EUでは3月にオランダの議会選、4月にフランスの大統領選が実施され、両国で政治の空白が生じることから、その前に追加融資の実施を決め、ギリシャ危機再燃の不安を払しょくしたいという事情がある。今回の合意で前進はしたが、オランダの選挙までに決着するかどうかは微妙なところ。これに関してデイセルブルム議長は、融資実施はギリシャの債務返済期限に間に合えば十分で、「3月や4月、5月に実施する必要はない」と述べた。