英政府は17日、大手銀行ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)が国内支店の一部を売却する計画を断念したと発表した。同売却は公的支援の条件としてEUから求められている競争上の是正策の一部。政府は条件を満たすため、RBSと代替策をまとめたことを明らかにした。
RBSは金融危機に際して英政府から総額450億ポンドの支援を受け、国有化された。政府は現在、同行の株式の7割を保有している。
支店の売却は、EUの欧州委員会が支援を認めた際に求めた条件のひとつ。救済されたRBSが他の銀行との競争で有利とならないようにする意図がある。これを受けて同行は、国内支店の1割超に相当する約300支店を分社化して新部門「ウィリアムズ・アンド・グリン」を設立し、売却することを決定。2010年にスペイン最大手銀行バンコ・サンタンデールに売却することで合意したが、RBSの口座をサンタンデールに移す作業が両行の情報技術(IT)システムの違いによって難航したことなどから、12年に計画を中止した。その後も売却先が見つかっていなかった。
英財務省によると、代替案は◇RBSは競争力が弱い中小銀行の事業拡大を支援するための基金を創設する◇RBSの顧客である中小企業が取引銀行を中小銀行に切り替える際、銀行側に生じるコストをRBSが負担する◇中小銀行の法人顧客(中小規模の事業者)がRBSのネットワークを利用できるようにする――といった内容。RBSの負担額は総額7億5,000万ポンド(約8億7,800万ユーロ)程度に上るという。
財務省によると、同提案は欧州委のベステアー委員(競争政策担当)が支持しているが、他の欧州委員の承認を取り付ける必要がある。
英政府はRBSが欧州委から求められた条件をすべて満たさない限り、再民営化を認めない方針を打ち出している。ウィリアムズ・アンド・グリン売却は最後の課題だった。今回の代替案が承認、実施されると、すべてのハードルをクリアし、民営化と配当再開が可能となる。