ロンドン証券取引所(LSE)は2月26日、ドイツ取引所と合併する計画について、欧州委員会が提示した承認条件を受け入れない意向を表明した。欧州委が両社に譲歩して条件を緩和することは考えにくいことから、合併のとん挫が濃厚となってきた。
ドイツ取引所とLSEは昨年3月に合併で合意した。しかし、欧州委員会は両社の経営統合を認めた場合、欧州における清算事業やデリバティブ(金融派生商品)取引などの分野で公正な競争が阻害される恐れがあるとして、承認に難色を示していた。
これを受けてLSEは、デリバティブ清算機関LCHクリアネットの仏部門をパリ証券取引所などの運営会社であるユーロネクストに売却することを決めたものの、欧州委はさらなる事業の放出を要求。国債などの電子取引システムを手がける伊MTSの株式売却を合併承認の条件として提示した。
これに対してLSEは、イタリアの全事業が同社にとって極めて重要で、さらにMTS売却を伊当局が承認しないとの見方を示し、欧州委の要求を拒否した。
LSEとドイツ取引所は合併後の本社をロンドンに設置することを取り決めていた。しかし、ドイツ取引所の地元であるヘッセン州政府は当初から懸念を表明。英国が昨年6月の国民投票でEU離脱(ブレグジット)を決定すると、合併計画への風当たりは一段と強くなった。ロンドンが本社ではEUの規制が届かなくなるためで、ヘッセン州のアルワジール経済相は、ブレグジット決定は合併審査に影響するとの立場を明らかにしていた。同州が承認しなければ合併は実現しない。
ドイツ取引所との合併計画に対してはブレグジット決定後に英国でも反対意見が強まっており、英国議会の議論では国益に反するとの批判が出ていた。このためLSEが合併を断念した背景には政治的な圧力があるとの見方も出ている。