塗料世界最大手の蘭アクゾノーベルは9日、ガラス・塗料大手の米PPGインダストリーズから拘束力のない買収提案を受け取ったことを明らかにした。買収提示額は時価総額を上回っているものの、アクゾノーベルは同社の真の価値が過小評価されているとして拒否の姿勢を提示。株主を味方に取り込むために、一部の株主から要求されていた特殊化学部門の放出を実施する意向を表明した。
PPGはアクゾノーベルを1株当たり現金83ユーロで買収することを提案した。これは前日終値を29%上回る水準で、同社を210億ユーロと評価したことになる。
PPCは板ガラスと自動車・航空機用ガラスの有力メーカーで、自動車用塗料や建築・航空機用コーティング剤なども手がけている。2016年の売上高は145億ドル、営業利益は19億ドルだった。
アクゾは同年の売上高が142億ユーロ、営業利益が15億ユーロで、事業規模はPPCとほぼ同じ。買収が実現するとPPCはコーティング剤とガラス分野で世界最大手となる。
アクゾの特殊化学部門は売上高が48億ユーロで、営業利益6億3,000万ユーロを計上した。一部の株主は株価を高めるために同部門の放出を要求しており、経営陣はこれまで検討を行ってきた。
アクゾは今回の声明で、特殊化学部門を分離して新規株式公開(IPO)する考えを明らかにした。他社への売却の可能性も排除していない。特殊化学大手の独エボニックは買収を通した事業拡大に取り組んでいることから、同部門の買収を打診する可能性がある。
世界の特殊化学業界は2015年から再編期に突入しており、多くの企業が事業の整理、買収に動いている。