欧州中央銀行(ECB)は19日にフランクフルトで開いた定例政策理事会で、量的金融緩和を含む金融政策の維持を決めた。ユーロ圏では物価安定が進んでいるが、基調は依然として弱く、超低金利政策と量的緩和の継続が必要と判断した。
ECBは昨年12月の理事会で、ユーロ圏の国債などを買い取る量的緩和について、毎月の買い取り額を4月から200億ユーロ縮小し、600億ユーロとするものの、同措置を9カ月延長し、2017年12月末まで継続することを決めていた。今回の理事会は、これらの方針を維持することを確認。政策金利も変更せず、主要政策金利を0%、中銀預金金利をマイナス0.4%に据え置くことを決めた。
ユーロ圏の2月のインフレ率は前年同月比2%となり、約4年ぶりにECBが目標とする水準に達した。景気も緩やかな回復が続いている。ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、2017年の予想インフレ率を1.7%とし、前回(12月)の1.3%から大幅に引き上げた。17年の域内総生産(GDP)予想伸び率は1.7%から1.8%に上方修正した。
ECBのドラギ総裁は理事会後の記者会見で、「デフレの懸念は概ね失せた」として、追加緩和策の実施の「緊急性はもはやなくなった」と述べた。その一方で、物価上昇が原油高に伴うもので、価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いた基礎インフレ率が低水準にあることを強調し、「基調が上向いていると確信できる兆しはない」と述べ、当面は現行の金融緩和を継続するのが妥当との考えを示した。状況が悪化した場合に、量的緩和の規模、期間を拡大する用意があることも言明した。
ただ、ECBは民間銀行への低利の長期資金供給を打ち切ることを決定。また、過去の理事会後の声明に盛り込まれていた「必要に応じて、あらゆる措置を講じる用意がある」という文言が、今回は削除された。このため、市場ではECBが金融緩和の見直しを模索し始めたとの観測が広がり、ユーロは同日に大きく値上がりした。