欧州委員会は13日、ロシアの国営ガス会社ガスプロムが中東欧市場で公正な競争を阻害した疑いで調査を進めている問題で、同社から和解に向けた改善策が示されたことを明らかにし、利害関係者からの意見募集を開始した。今後7週間にわたる市場テストの結果を踏まえ、ガスプロムからの提案を法的拘束力のある公約として受け入れて、同社に対する調査を打ち切るかどうか判断する。
欧州委は2012年、ガスプロムが中東欧市場における独占的な地位を乱用し、ガス価格を不当につり上げるなどして公正な競争を阻害している可能性があるとして、正式な調査を開始。ブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキアの計8カ国のガス市場で競争法に違反したとの疑いを強め、15年4月に是正手続きの第1段階である異議告知書をガスプロムに送付した。
欧州委は異議告知書で、ガスプロムが同社から天然ガスを購入する顧客企業に再輸出を禁止したり、買い入れたガスを特定の地域でのみ使用することを強制するなどの制約を設け、EU域内でのガス取引を阻害していると指摘していた。ガスプロムはこうした懸念に対応するため、中東欧市場における自由なガス取引の障害となるあらゆる契約条項を排除することを確約した。
一方、ブルガリア、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの5カ国でガス価格を不当につり上げているとの批判に対応するため、ガスプロムはベンチマークを導入して市場価格を基に料金設定を行う方針を打ち出した。欧州委はさらに、ブルガリアとポーランドで、ガスプロムが主導するパイプライン計画への投資に応じてガスを供給している点を問題視していたが、今後は同社が所有するインフラへの投資や、国内パイプライン網への優先的なアクセスをガス供給の条件としないことを確約した。
欧州委のベステアー委員(競争政策担当)は「ガスプロムの提案によって中東欧市場で適正価格での自由なガス取引が可能になり、ロシア産ガスに依存する多くの欧州市民が恩恵を受ける可能性がある」と指摘。一方、ガスプロムのメドベージェフ副社長は「欧州委と関係する各方面が提案を受け入れ、近く当社に対する調査が打ち切られることを希望する」とコメントした。