LSEとドイツ取引所の合併計画、欧州委が正式却下

欧州委員会は3月29日、ロンドン証券取引所グループ(LSE)とドイツ取引所の合併計画を承認しないと発表した。合併を認めた場合、債券決済市場で「事実上の独占状態」となり、公正な競争が阻害されると判断した。両取引所はこれまでにも経営統合を試みた経緯がある。世界の金融センターでシンガポールや香港などアジア勢が急速に勢力を拡大するなか、ニューヨーク証券取引所などに次ぐ世界有数の取引所グループを目指した合併計画は、今回も頓挫した。

欧州委のベステアー委員(競争政策担当)は「LSEとドイツ取引所はいくつかの市場で業務が重複しており、統合を認めた場合、事実上の独占が生まれる恐れがある。両取引所は競争上の懸念を取り除くための具体策を提示することができなかった」と指摘した。

LSEとドイツ取引所は昨年3月に合併で合意した。欧州委は両社の経営統合を認めた場合、欧州における清算事業やデリバティブ(金融派生商品)取引などの分野で公正な競争が阻害される恐れがあるとして、昨年9月に本格調査を開始。これを受けてLSEは、デリバティブ清算機関LCHクリアネットの仏部門をパリ証券取引所などの運営会社であるユーロネクストに売却することを決めたものの、欧州委はさらなる事業の放出を要求。国債などの電子取引システムを手がける伊MTSの株式売却を合併承認の条件として提示した。

これに対してLSEは2月末、イタリアの全事業が同社にとって重要だとして欧州委の要求を拒否。このため、合併が実現する可能性は極めて低いとみられていた。

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