「操縦室常時2人体制」、独航空業界が廃止へ

ドイツ航空産業全国連盟(BDL)は4月28日、旅客機の操縦室に乗員2人が常駐する体制を廃止する方針を明らかにした。同体制は精神疾患を持っていた副操縦士が意図的に墜落事故を起こした2年前の事件を受けて導入されたものの、ハイジャックのリスクが大幅に高まりメリットよりもデメリットの方が大きいことが判明したため、撤回する。BDLは安全性確保に向けた新規則を連邦航空庁に提出し、遅くとも6月1日までに新体制に移行する予定だ。

事故は2015年3月、ルフトハンザ航空のLCC子会社ジャーマンウイングスで起きた。正操縦士が操縦室を一時退出した後に副操縦士が内側からドアをロック。正操縦士が室内に入れないようにしたうえで、下降飛行を行いフランス南部の山岳地帯に墜落させた。日本人2人を含む乗客乗員150人が全員死亡した。

ドイツの航空会社はそれまで、ハイジャックを防止する目的で操縦室の内側からカギをかけられるようにしていた。同事件はこのルールの盲点を突いたものであったことから、欧州航空安全局(EASA)は旅客機の操縦室に常に2人以上の乗務員がいる規定を設けるよう欧州の航空各社に勧告。BDLはこれに沿ったルールを導入した。

だが、BDLが実施した包括的なリスク評価の結果、操縦室常時2人体制では操縦室ドアの開閉頻度が増え、入室権限のない者が入り込むリスクが大幅に高まることが判明した。操縦室内でのパイロットの自殺が1931年以降4件にとどまるのに対し、ハイジャックは1,074件に達するという。

BDLに加盟するドイツの航空会社は今後、パイロット以外は操縦室に入れない従来のルールを復活させるとともに、パイロットの精神状態の診断体制を強化するなど新たな安全性向上策を導入する。

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