試用期間中は労働契約を2週間前の予告で解除できる。これは民法典(BGB)622条3項に記されたルールである。ただし同4項には、労働組合との協定で特別な取り決めがある場合は予告期間を延長ないし短縮できるとも記されている。この3項と4項に関する係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が3月23日の判決(訴訟番号:6 AZR 705/15)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は航空会社の客室乗務員が同社を相手取って起こしたもの。同乗務員は2014年4月28日付で採用された。試用期間は6カ月だった(10月27日まで)。
労働契約の1条には、同乗務員と雇用主である航空会社の権利と義務は業界の労使協定に基づくと記されていた。労使協定では試用期間中の労働契約の解除予告期間が採用後3カ月以内で1週間、同3カ月超で2週間と定められていた。
一方、原告と被告の労働契約の8条には労働契約の解除予告期間を、労使協定に定められた試用期間中の解雇予告期間に触れることなしに 契約解除日となる各月末の6週間前とすることが記されていた。
被告は9月5日、原告に対し同20日付の解雇を通告した。労使協定の規定に基づき解雇予告期間を2週間としたわけである。
これに対し原告は、解雇は労働契約8条に基づいて行われなければならず、解雇日は10月末日になるはずだと主張。2週間の解雇予告を不当として提訴した。
原告は一審で敗訴したものの、二審で逆転勝訴。最終審のBAGも同様の判決を下した。判決理由でBAGの裁判官は、普通取引約款(Allgemeine Geschaeftsbedingungen)の一種である労働契約は法律に精通していない平均的な被用者に理解できるものでなければならないと指摘。平均的な被用者は、雇用主と被用者の権利と義務が業界の労使協定に基づくという労働契約1条の文章を読んでも試用期間中の解雇予告期間が2週間(3カ月以内の場合は1週間)であることを理解できないとして、原告には「各月末の6週間前」を解雇予告期間とするとした労働契約8条の規定が適用されるとの判断を示した。
被告航空会社は試用期間中の解雇予告期間について、被用者が明確に理解できるような形で労働契約に明記しなければならなかった訳である。