欧州裁が掃除機試験の見直し要求、ダイソン敗訴の一審破棄

英家電大手ダイソンが欧州連合(EU)の欧州委員会に対し、掃除機のエネルギー効率試験の見直しを求めた訴訟で、欧州司法裁判所は11日、ダイソンの訴えを退けた一般裁判所の判決を破棄し、同裁判所に審理を差戻した。欧州裁は「可能な限り実際の使用状況に近い環境」でエネルギー効率を測定すべきだと指摘。紙パックにある程度ゴミが溜まった状態で試験を行うよう求めるダイソンの主張について、審理のやり直しを命じた。紙パック式掃除機を手がけるボッシュやミーレなどの独メーカーには痛手となりそうだ。

EUでは幅広い製品を対象に、環境に配慮した設計を行うことを義務づけた「エネルギー関連製品のエコデザインに関する枠組み指令(ErP指令)」に基づき、製品別に省エネ基準が策定されている。掃除機については2014年9月から省エネ基準が導入され、エネルギー消費量や吸引したダストが掃除機から再排出される割合などの測定値に基づき、A~Gにランク付けした「エネルギーラベル」の表示が義務づけられている。

家電製品がEUの省エネ基準を満たしているかどうかをチェックするためのエネルギー効率試験は、省エネ基準を定めた規則に基づいて実施されるが、掃除機の電力消費量は本体に空の紙パックを取り付けた状態で測定されている。通常の掃除機では紙パックにゴミが溜まるとパワーを引き上げて吸引力を維持するため、実際の使用時には検査時を上回る電力が消費されていることになる。

ダイソンは自社の製品が紙パックを使用しないサイクロン式のため、現行の試験制度の下で競争上、不利な立場に置かれていると主張している。同社の委託で独立した検査機関が独ボッシュとシーメンス製掃除機の電力消費量を測定したところ、通常の試験方法ではすべての製品が最高ランクの「A」を達成する一方、紙パックにゴミが溜まった状態では「D」または「E」の基準しか満たすことができなかった。

ダイソンは2015年10月、独自の調査データを基に、現行のエネルギー効率試験の見直しを求める訴訟を提起した。しかし、欧州裁の一般裁判所は同年11月、外部機関による検査が欧州委の検査より正確で信頼性が高く、かつ再現可能なものかどうかを証明できていないと指摘し、ダイソンの訴えを棄却。ダイソンはこれを不服として上訴していた。

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