独高級車大手のBMWグループは、世界の生産能力を現在の年240万台から、今後5年間で年約300万台に引き上げる計画のもようだ。独経済紙『ハンデルスブラット』(5月10日付)がBMWグループ筋から得た情報として報じた。BMWは同紙の取材に対しコメントを控えている。
具体的には、中国における生産能力を現在の年30万台から2倍の年約60万台へ、北米(米国およびメキシコ)は現在の年41万台から年75万台へ引き上げる計画。ドイツの工場でも生産能力を増強する方針。
生産能力の増強は主に、新しいオフロード車に充てるもよう。また、内燃エンジン車と電気自動車の生産を切り替えることができる柔軟な生産ライン・システムを構築する計画。同社は、2021年からすべての工場で電気駆動車を生産できるようにする方針。
■ 現地生産増強で関税引き上げや貿易障壁のリスク回避
『ハンデルスブラット』紙によると、生産能力の増強は、関税の引き上げや貿易障壁のリスクを回避するための措置で、現地生産を強化する。
米国工場の生産能力は、約10万台引き上げて年50万台とする計画。米国工場で電気自動車の生産もできるようにする。建設中のメキシコ工場の生産能力は最大年25万台を計画しており、米国とメキシコの工場を合わせた北米生産能力は年75万台となる。
■ 中国でSUVシリーズの生産強化
BMWは中国では、華晨中国汽車(Brilliance)との合弁会社BMWブリリアンス・オートモーティブ(BBA)を通して瀋陽の大東区(Dadong)と鉄西区(Tiexi)に工場を持つ。2工場では2016年に計約30万台を中国市場向けに生産した。中国ではこれに加え、米国とドイツから20万台を輸入している。中国の生産能力拡大により、輸入台数を減らす意向。また、中国市場は今後さらに成長する見通しで、中国政府が現地生産の増強を支持していることも背景にある。
SUVモデル「Xシリーズ」のうち、中国では現在「X1」を生産している。「X3」は現在、米スパータンバーグ工場のみで生産しているが、次世代モデルは、中国と南アフリカの工場でも生産する計画。内部情報によると、将来は「X5」も中国で生産する方針という。同措置により、米国工場の負荷を軽減する狙いもあるもよう。
■ オランダまたはドイツでMINI生産も
ドイツでは、ディンゴルフィング、ミュンヘン、ライプチヒ、レーゲンスブルクの工場で生産を拡大し、場合によってはMINIモデルを生産する可能性もあるという。MINIの生産を検討するのは、英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めたことを受けたもので、MINIの電気自動車をどの工場で生産するかについては年内に決定するもよう。英国がEU域内市場へのアクセスを失う場合、MINIを受託生産しているオランダのVDLネッドカーかドイツの工場で生産すると見られている。