欧州委がキヤノンなど3社に異議告知書、買収めぐりルール違反

欧州委員会は6日、キヤノンと独製薬大手メルク、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の3社に対して、EU競争法が定める買収に関するルールに違反した疑いがあるとして、異議告知書を送付したと発表した。キヤノンは東芝メディカルシステムズを買収した際の手続きが問題視されており、多額の制裁を科せられる可能性がある。

キヤノンは2016年3月、東芝メディカルシステムズを6,655億円で買収する契約を結んだ。通常は関係当局に承認されてから買収手続きを完了させるが、東芝メディカルシステムズの親会社である東芝が財務悪化で売却益を早く手にする必要があったため、キヤノンは特別な仕組みを設けて、2段階で買収を進めた。まずキヤノンが東芝メディカルシステムズの新株予約権を取得し、即座に買収額を東芝に支払う。その後にキヤノンは買収計画を当局に申請し、承認後に新株予約権を行使して株式を取得するというものだ。

キヤノンは16年8月に買収認可を欧州委に申請し、同年9月に承認された。しかし、欧州委は申請、承認に先立つ第1段階の時点で実質的に買収が行われたと判断。買収の可否をめぐる審査を終えてから取引を成立させることを義務付けるルールに違反した疑いがあるとして、調査を進めていた。

一方、メルクは米同業シグマ・アルドリッチの買収、GEは風力発電用ブレード大手のLMウインド・パワー(デンマーク)の買収をめぐり、欧州委に認可を申請した際に誤った情報を提供し、適正な判断材料を与えないまま承認を取り付けた疑いが持たれている。

欧州委は規則違反があったと最終的に認定した場合、買収認可は取り消さないものの、制裁を科す。制裁額はキヤノンが全世界の売上高の最大10%、メルクとGEは同1%に相当する規模となる。キヤノンについては、認可前に買収手続きを完了したのは悪質として、他の2社を大幅に上回る水準に設定された。

キヤノンは6日に発表した声明で、「異議告知書の内容について精査した上で、適切な対応をとる」として、踏み込んだコメントを避けた。メルクとGEは違法行為を否定している。

キヤノンの買収手法をめぐっては、日本の公正取引委員会も16年6月に承認した際、同様の問題点を指摘し、「注意」処分を行っていた。

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