ディーゼル車走行禁止を行政裁が命令、シュツットガルトで来年から

独シュツットガルト市で人体に有害な二酸化窒素(NO2)の濃度が欧州連合(EU)基準を上回っているのは問題だとして環境保護団体ドイチェ・ウンベルトヒルフェ(DUH)がディーゼル車の市内走行の全面禁止を早期に実施するよう求め地元バーデン・ヴュルテンベルク(BW)州を訴えている係争で、シュツットガルト行政裁判所は28日、原告の訴えを認める判決を下した。同州など自動車産業を抱える国内5州の政府と連邦政府(国)および自動車業界はディーゼル車のソフトウエアを交換することで走行制限・禁止を回避する方向で調整を進めているが、同措置については効果が不十分だとの判断を示した。裁判は今後、最高裁の連邦行政裁判所に持ち込まれる見通し。連邦行政裁がシュツットガルト行政裁と同様の判決を下すと、ディーゼル車の走行はNO2濃度基準を満たせない国内のすべての都市で禁止されることになり、低迷しているディーゼル車の需要は一段と落ち込みそうだ。

欧州連合(EU)ではNO2の許容上限値が1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)に設定されている。シュツットガルトでは同規制が始まった2010年以降、一度も順守できない状況が続いていることから、DUHはBW州政府を提訴した。他の違反都市でも同様の裁判を起こしている。

BW州は今回の裁判で(1)ディーゼル車のソフト交換(2)市内走行速度制限(3)プレートナンバーに基づく走行規制(4)市内走行料金や近距離走行料金の導入(5)ディーゼル車と欧州排ガス規制「ユーロ3」以下のガソリン車の市内走行を2020年1月1日以降に全面禁止する――といった、NO2濃度の低減に向けた案を提示した。だが、シュツットガルト行政裁は今回の判決で、(1)〜(4)については濃度低減効果が不十分だとして却下。(5)については効果を期待できるとしながらも施行予定日が遅すぎるとして来年1月1日付の実施を命じた。

判決理由で裁判官は、有害物質にさらされる地域住民の生命と健康を守ることは、走行禁止で所有権と行動の自由が制限される自動車の持ち主の権利よりも重要だとの判断を示した。

DUHはNO2濃度規制に違反する他の都市でもディーゼル車の走行が禁止されるようにするために、最高裁の連邦行政裁に上告する意向だ。一方、BW州政府は判決文を詳細に検討したうえで上告するかどうかを決定するとしている。

同州政府は2月、「ユーロ5」以下のディーゼル車を対象に来年からシュツットガルトでの走行を制限する方針を示した。だが、同市には自動車大手のダイムラー、ポルシェ、サプライヤー大手ボッシュの本社があり、自動車産業は地域経済の支柱であることから方針を転換。現在はNO2濃度の削減をユーロ5ディーゼル車のソフト交換だけで実現する考えを示している。

連邦政府と5州の政府、および自動車業界の代表は8月2日に「ナショナル・フォーラム・ディーゼル」という会合を開き、ディーゼル排ガス問題の対策を協議する。ユーロ5ディーゼル車のソフト交換は対策案の柱となっているものの、今回の判決はこれを明確に否定しており、同会合に影を落としそうだ。

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