ボーイングの優遇税制めぐる紛争、EUが逆転敗訴

世界貿易機関(WTO)の上級委員会は4日、米航空機大手ボーイングに対する米ワシントン州の税制優遇措置が違法な補助金にあたると訴えていたEUの主張を退ける判断を下した。一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)はWTO協定違反を認定していたが、上級委はこれを覆して米側の逆転勝訴となった。

航空機補助金をめぐるEUと米国の通商紛争は13年前に遡る。双方は欧州エアバスとボーイングの新型機開発に相手側が不当な支援を行っているとして、WTOを舞台に2004年から提訴合戦を繰り広げてきた。

ワシントン州の優遇税制は、ボーイングの次期大型旅客機「777X」の開発・製造を対象としたもの。欧州委員会は57億ドルに上る事業税などの軽減措置が777Xの製造拠点をワシントン州に置くことや、資材を国内で調達することを条件としている点を問題視し、違法な補助金にあたるとして2014年に提訴。パネルは昨年11月、優遇税制によって輸入品が市場から不当に締め出されたとする欧州委の主張を認め、協定違反と結論づけて米側に是正を勧告した。

しかし、上級委は「優遇税制が貿易の流れを阻害したとの解釈には誤りがある」と指摘し、パネルの判断を覆した。同委の決定は20日以内に正式に採択される見通しで、ボーイングへの公的支援をめぐる紛争については米側の勝訴が確定することになる。

上級委の判断を受け、エアバスの広報担当責任者は「ボーイングは違法な補助金を受けており、それによってエアバスは多大な損害を受けた。ゲームオーバーには程遠い状況だ」とコメント。一方、ボーイングは「米国にとって明確かつ完全な勝利だ」との声明を発表した。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表も「EUは長年にわたり、エアバスに違法な補助金を提供してきた。米国もボーイングに対して同様の措置を講じていると非難していたが、根拠のない主張だったことが今回の裁定で明らかになった」とコメントした。

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