欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/9/18

EU情報

欧州委員長がEU財務相・欧州通貨基金など提案

この記事の要約

欧州委員会のユンケル委員長は13日、欧州議会で行った施政方針演説で、EU財務相やEU版の国際通貨基金(IMF)となる「欧州通貨基金」の創設などを提案した。英国の離脱決定で揺れるEUの結束強化を目的とした機構改革の一環。仏 […]

欧州委員会のユンケル委員長は13日、欧州議会で行った施政方針演説で、EU財務相やEU版の国際通貨基金(IMF)となる「欧州通貨基金」の創設などを提案した。英国の離脱決定で揺れるEUの結束強化を目的とした機構改革の一環。仏マクロン大統領が提唱しているユーロ圏共通予算を創設する案については、EUの全加盟国がユーロを導入することを視野に入れ、「必要ない」として、拒否する意向を表明した。

EUではギリシャに端を発した債務危機が深刻化した反省を踏まえ、財政、金融統合を模索する動きが活発化し、これまでに銀行同盟創設構想に基づく銀行監督、銀行破綻処理の一元化が実現した。ユンケル委員長の機構改革案は、これをさらに拡大するものだ。

同改革にはマクロン大統領が積極的で、独メルケル首相も支持を表明している。ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)に代わる欧州通貨基金の創設は独仏が合意済みで、欧州委が5月末に発表したEUの経済通貨統合(EMU)の深化をめぐる議論のたたき台となる政策文書にも盛り込まれていた。ユンケル委員長は欧州委が12月に具体案を提示するとしている。

独仏の機構改革案はユーロ圏に特化した内容で、共通の財務相は「ユーロ圏財務相」とすることを提唱している。しかし、ユンケル委員長は今回の演説で、通貨統合深化の必要性を強調。EU離脱を決めた英国を除く非ユーロ圏8カ国にユーロ導入を促し、ユーロ圏を現在の19カ国から27カ国体制に拡大したい考えを示した。このため、将来にEU加盟国のすべてがユーロに参加することを見据え、新設ポストをEU財務相とし、同職に欧州委の副委員長が就任することを提案した。ユーロ圏共通予算を創設する構想も、同様の理由で退けた。

このほかユンケル委員長は、EU統合深化の象徴として、欧州理事会常任議長(EU大統領)と欧州委の委員長の職を一本化することや、国境でパスポートを提示することなく域内を移動できるようにするシェンゲン協定にすべての加盟国を参加させる方針などを打ち出した。