ドイツ機械工業連盟(VDMA)のカールマルティン・ヴェルカー会長は17日に開幕した業界イベントの講演で、光ファイバー通信網の整備に次期政権は総額400億ユーロを投資すべきだと訴えた。同国が官民挙げて取り組む製造業のIoT化計画「インダストリー4.0(I4.0)」を実現するためには、高速通信網が必要不可欠であるにもかかわらず、人口希薄地帯では整備が進まず、I4.0化に向けた投資を機械メーカーが行うための前提が整っていないためだ。同会長は、優秀な中堅企業が人口希薄地域に多いことを指摘。こうした企業が世界市場で今後も競争力を保つためには通信インフラ面で政府が支援を行う必要があると明言した。
2013年に成立した現政権は2018年までに国内の通信速度を最低50メガビット/秒に引き上げる目標を打ち出し、助成金交付などを通して普及率の引き上げを目指した。だが、十分な効果は出ておらず、達成できない公算が高い。
通信速度を50メガビット/秒へと引き上げる手法としては、既存の銅線ケーブルを活用する「ベクタリング」という技術がある。ただ、IoTが今後本格化すると、これまでの次元を超えた大量のデータがリアルタイムでやり取りされるようになることから、1ギガビット/秒の速度を持つ光通信インフラの構築が緊急の課題となっており、同インフラ整備の遅れに対する経済界の危機感は大きい。
全国的な光通信網の構築に必要な投資額は最大1,000億ユーロに上る見通し。経済省の昨年の試算によると、全人口の4分の3が居住する都市部では補助金を支給しなくても同通信網を敷設できるものの、人口希薄地域では採算が取れないため、公的支援が必要となる。
ドイツでは9月下旬に連邦議会(下院)選挙が実施された。現在、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)、緑の党の計4党が政権樹立に向けた予備交渉を行っている。