ダークプール取引のDVCデータ公表を延期、新金融規制始動に暗雲

欧州証券市場監督機構(ESMA)は9日、証券取引所を通さない「ダークプール」取引に対する数量規制である「ダブル・ボリューム・キャップ(DVC)」に関するデータの公表を3月に延期すると発表した。DVCはEUの新たな金融規制「第2次金融商品市場指令(MiFIDⅡ)」の柱の1つで、エクイティ商品に係る透明性要件の適用除外規定として導入されたメカニズム。MiFIDⅡは当初の予定から1年遅れでようやく今月3日に施行されたが、市場の透明性向上を図る取り組みは出だしで水を差された格好だ。

ダークプールとは証券取引所を通さず、投資家の売買注文を証券会社の社内でつけあわせて約定させる取引のことで、取引前透明性の確保が求められていない点が最大の特徴。機関投資家やヘッジファンドなどに広く利用されて市場が拡大しているが、価格や数量などの流動性が外部から見えず、取引参加者の匿名性が確保されているため、市場の透明性を阻害しているとの批判が高まっている。

そこでMiFIDⅡでは取引前透明性要件の適用除外が拡大するのを防ぐため、ダークプールに対する数量規制としてDVCを導入した。具体的には過去1年間のデータを基にしたある銘柄のダークプール取引がEU市場における取引全体の8%を超えると、当該銘柄のダークプール取引が6カ月禁止される。

ESMAは個々の銘柄の取引が上限を超えたかどうかを判断するため、取引所の運営者に対して1月5日までに過去1年分の取引データを提出するよう求めていたが、期限までに提出されたデータファイルは75%程度にとどまった。ESMAは正確な数字を算出するにはデータが不十分で、このままDVCデータを公表すれば「不公正な競争条件が生じる可能性がある」と指摘。各国当局や取引所の運営者と協議した結果、データの公表を3月に延期することを決めたと説明している。

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