「サイバーセキュリティ憲章」に欧米企業が署名、デジタル化への信頼獲得 へ

シーメンスをはじめとする欧米の国際的な企業・組織は16日、ミュンヘン安全保障会議の会場で「サイバーセキュリティ憲章」に署名した。モノのインターネット(IoT)など経済・社会のデジタル化を推し進めるためにはネット利用に対する幅広い信頼の獲得が欠かせないことから、同憲章を通して政府、企業に必要な行動を促す考えだ。

同憲章はシーメンス(電機)の主導で作成されたもので、同社とエアバス(航空宇宙)、アリアンツ(保険)、ダイムラー(自動車)、IBM(IT)、NXP(半導体)、SGS(技術監査)、ドイツテレコム(電気通信)の計8社とミュンヘン安全保障会議を主催する非営利団体MSCが署名した。G7の議長国であるカナダのクリスティア・フリーランド外相と欧州連合(EU)欧州委員会のエルジビエタ・ビェンコフスカ委員(域内市場・産業・起業・中小企業担当)が支持を表明している。

シーメンスのジョー・ケーザー社長は「データとネット化したシステムの安全性に対する信頼はデジタル転換の重要な要素の一つだ」と述べたうえで、人々や企業の信頼を獲得するために主要な企業が個別に行動するのでなく力を合わせることが重要だと強調した。同憲章の新たなパートナーを歓迎するとしている。

同憲章では政府と企業が取り組むべき課題として、◇サイバーセキュリティ専門の省の設置と最高情報セキュリティ責任者(CISO)の任命◇自動運転や協働ロボットなどサイバー攻撃で深刻な状況が起こり得るIoTインフラを独立機関が認証する制度の導入◇セキュリティ・データ保護機能をあらかじめ搭載したうえでIoT製品を販売する◇サイバーセキュリティ規則を自由貿易協定の一部として組み込む◇教育や国際的な取り組みを強化する――などを挙げている。

サイバー攻撃の被害は大きく、欧州ネットワーク情報セキュリティ庁(ENISA)によると2016年の被害総額は世界全体で5,600億ユーロを超えた。欧州では被害額が国内総生産(GDP)の1.6%に達する国が数カ国ある。

また、ハイテク調査会社ガードナーによると、世界で使用されているネット接続機器の数は昨年84億台に上り、前年比で31%増加した。2020年には204億台に達すると予想しており、IoT社会は急速に進展する見通しだ。

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