年金受給開始年齢への到達をもって雇用関係を終了する労使契約を締結している場合、労使は有期契約を通して雇用関係の終了時期を延長できる。これは社会法典第4編(SGBⅣ)41条第3文に記されたルールである。有期雇用契約の年数と更新回数を制限する「パートタイムと有期労働契約に関する法律(TzBfG)」のルールは年金受給者に適用されないわけである。このSGBⅣ41条第3文が有期雇用契約の更新回数を制限する欧州連合(EU)有期労働指令(1999/70/EC)と、年齢による差別を禁止したEU一般雇用平等指令(2000/78/EC)に抵触しないかどうかを巡る係争でEU司法裁判所(ECJ)が2月28日の判決(訴訟番号:C-46/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は独ブレーメン州の教員フベルトゥス・ヨーン氏が同州を相手取って起こしたもの。同氏は定年前の2014年2月5日付の文書で、定年後も引き続き勤務することを申請し、州当局との間で翌年度末の15年7月31日まで退職を延長する契約を結んだ。1年間の有期雇用契約を締結したわけである。
同氏は退職をさらに1年、延期することを15年2月4日付の文書で申請したところ、拒否されたことから、上記のEU法に違反するとして提訴。ブレーメン州労働裁判所はECJの判断を仰いだ。
ECJは今回の判決で、原告ヨーン氏は65歳の定年後、公的年金の受給により生活の安定を保障されており、定年前の被用者とは置かれている立場が違うことを指摘。被告ブレーメン州が契約更新を拒否したことは、有期契約の更新回数を制限したEU指令と年齢差別を禁止したEU指令のどちらにも抵触しないとの判断を示した。