欧州委が「デジタル税」導入を提案、IT大手の課税逃れ阻止で

欧州委員会は21日、米グーグルやアップルなどIT分野の大手企業を対象とする「デジタル税」の導入をEU加盟国に提案した。国際的に事業展開するIT企業への課税問題をめぐっては、20カ国・地域(G20)や経済協力開発機構(OECD)でも現行ルールの見直しが進められているが、早期の合意形成は困難なため、EU独自に制度改革に向けた検討を加速させる。

従来の課税制度では、国内にオフィスや工場など物理的な拠点を持たない企業に対し、原則として法人税を課せない仕組みになっている。一方、EUでは国によって異なる課税ルールを利用したネット企業などによる課税逃れが問題になっている。欧州委は昨年9月、法人税率の低い国に利益を移転することで税金を低く抑える租税回避に対応するため、早急にIT企業に対する課税強化策をまとめる方針を示していた。

提案によると、デジタル税の課税対象となるのは世界全体の売上高が年間7億5,000万ユーロを超え、EU域内の売上高が5,000万ユーロを上回る企業。国内に物理的な拠点がないため現行制度では課税を免れている企業も対象で、利益ではなく、売上高が課税ベース。サービス利用者の居住地ごとに、加盟国がオンライン広告やサービス仲介などの売上高に3%を課税する。欧州委によると、域内で活動する120~150社が対象になる見通しで、EU全体で約50億ユーロの税収を見込む。

欧州委は同提案を短期的な暫定措置と位置づけ、抜本的な中長期の見直し案も打ち出した。加盟国は自国での◇年間売上高が7,00万ユーロ以上◇サービス利用者が年間10万人以上◇デジタルサービスのビジネス契約が年間3,000件以上――という3つの基準のうち、1つでも条件を満たした場合は国内に「デジタル拠点」があるとみなし、課税できるという内容。この場合は利益が課税ベースとなる。

欧州委は声明で、EU域内で活動するデジタル企業の実効税率は製造業など従来型企業のおよそ半分にとどまると指摘。ドムブロフスキス副委員長(金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当)は「デジタル化が社会にもたらした恩恵は計り知れないが、(IT企業の)莫大な利益が見逃されている現状は受け入れられない。OECDなどの国際的な枠組みに沿った改革が望ましいが、早急に21世紀型の課税ルールを構築する必要がある」と述べた。

ただ、税制改革には全ての加盟国による全会一致の承認が必要。低税率を武器にIT企業を誘致してきたアイルランドやルクセンブルクなどの反発が根強いことから、調整は難航が予想される。

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