アイルランド政府は24日、欧州委員会が同国による米アップルへの税優遇措置を違法な国家補助と認定し、最大130億ユーロの追徴課税を命じている問題で、アップルが欧州委の指示に従い追徴分の支払いを開始すると発表した。アイルランドとアップルは欧州委の命令を不服としてEU司法裁判所に追徴課税の取り消しを求める訴えを起こしているが、欧州委も命令に応じないアイルランドをEU法上の義務不履行で司法裁に提訴する方針を示しており、アイルランド側が譲歩した格好だ。
発表によると、アップルは第三者が管理する預託口座(エスクロー勘定)に追徴課税分を支払う。9月末までに支払いを終える計画だが、欧州委の追徴命令をめぐる取消訴訟の判決が確定するまで同口座で全額保管され、資金移管は行われない。
多国籍企業による課税逃れに対して国際的な批判が高まる中、欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、2014年に本格調査を開始した。その一環として同委は16年8月、2003年から14年にかけてアイルランドがアップルに適用していた税優遇措置を違法な補助金と認定し、同国政府に最大130億ユーロの追徴課税を命じた。アイルランドの法人税率はEU加盟国で最も低い12.5%だが、欧州委によると、アップルは現地子会社が製品を仕入れ、世界各地に販売した形にして米国以外の利益がアイルランドに集中するよう会計処理を行った結果、同社に適用された実際の税率は14年時点で0.005%まで引き下げられていた。
アイルランド政府は同年11月、欧州委の決定を不服としてEU司法裁の一般裁判所に取消訴訟を提起。一方、欧州委は昨年10月、追徴命令から1年以上経過してもアイルランドが課税を実行していないとして、同国を司法裁に提訴する方針を表明した。
アイルランドのドナフー財務相は、アップルへの税優遇措置を違法な国家補助と認定した欧州委の判断には現在も「根本的に同意していない」と強調。そのうえで「EUの一員として拘束力のある法的義務を守る」と述べ、取消訴訟が決着するまでの暫定措置としてアップルが追徴分の支払いに合意したことで、欧州委による法的措置を回避できるとの見通しを示した。