自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は20日、商用車部門を統括する子会社フォルクスワーゲン・トラック・アンド・バス(VWTB)の社名をトレイトン・グループに変更すると発表した。新規株式公開(IPO)をにらんだもので、VWという文字を用いない統括会社を創設することでVWからの分離を明確化し、商用車部門独自のアイデンティティーを強化したい考えだ。
トレイトン(TRATON)は輸送エコシステムの「TRAnsformation(転換)」、同社と顧客が情熱を注ぐ「TRAnsport(輸送)」、全世界の顧客が輸送する荷物の「TONnage(トン数)」、傘下ブランドの「TRAdition(伝統)」、顧客の究極の目標であり同社の態度でもある「ON(動作中)」を組み合わせた造語。同社は輸送のあり方が大きく変わろうとしている新しい時代に設立される若い会社にふさわしい社名だとしている。
VWは4月、計12あるグループブランドを大衆車、高級車、超高級車、商用車の4部門に再編したうえで、乗用車事業との関連が薄い商用車部門(VWTB)を有限会社から株式会社へと改め、事業の拡大や強化に向けた資金を調達しやすくする方針を打ち出した。VWTBの社名変更はこれに基づく措置。同子会社はMAN、スカニア、フォルクスワーゲン・カミーニョス・エ・オニブス(南米ブランド)、RIO(コネクテッドトラックシステム)の4ブランドで構成される。
一方、VWは19日、米同業フォードと戦略協業することで基本合意したと発表した。顧客ニーズにきめ細かく対応するとともに競争力を強化することが狙い。株式持ち合いなどの資本提携には踏み込まない。
VWは共同プロジェクトを複数、検討することを明らかにしたうえで、具体例として商用車の共同開発を挙げた。運送会社など顧客のニーズが変化していることから、両社はこれに対応するためにそれぞれの強みを持ち寄って相乗効果を引き出す考えだ。VWのグループ戦略を統括するトーマス・セドラン氏は、提携を通して柔軟性を高めることは長期経営戦略「トゥゲザー‐シュトラテギー2025」の中核的な要素の1つだと述べた。