欧州委員会は19日、米移動体通信向け半導体大手クアルコムの携帯端末向け半導体事業を巡り、EU競争法に違反した疑いがあるとして新たに「補足異議告知書」を送付したと発表した。クアルコムは今年1月、米アップルに対する携帯端末向け半導体の独占供給で9億9,700万ユーロの制裁金支払いを命じられており、引き続き欧州委の調査が続くことに強く反発している。
問題となっているのは、スマートフォンやタブレット端末などの無線通信や信号を制御する「ベースバンドチップ」と呼ばれる半導体の販売戦略。欧州委は2015年12月、クアルコムが同分野で急速にシェアを拡大しつつあった英アイセラ(11年に米エヌビディアが買収)を市場から排除するため、09~11年にかけて一部のベースバンドチップ製品を対象に、コストを下回る価格で提供する「略奪的価格設定」を行っていたとして、クアルコムに異議告知書を送付していた。
補足異議告知書には通常、欧州委の見解を裏付ける追加的な証拠やデータが盛り込まれている。欧州委は今回、クアルコムによる略奪的価格設定がベースバンドチップ市場にどの程度の影響を及ぼしたかを詳細に分析したと説明している。
クアルコムには反論の機会が与えられるが、最終的に欧州委が競争法違反と認定した場合、年間売上高の最大10%に相当する制裁金を科される可能性がある。クアルコムのドン・ローゼンバーグ法務担当最高責任者は「直ちに補足異議告知書に対する回答書の作成に着手する。欧州委が回答書を見れば当社の商慣行が完全にEUの競争ルールに合致していることが分かるだろう」とコメントした。