4G世帯カバー率99%へ、20年末実現で政府と携帯3社が合意

ドイツのアンドレアス・ショイアー連邦交通・インフラ相と国内16州の代表、および移動通信サービス3社の社長は12日、第4世代携帯電話(4G=LTE)のサービスを受けられる世帯の割合(世帯カバー率)を2020年末までに99%へと高める任意協定を締結した。与党は政権協定で4G空白エリアの除去を取り決めたことから、ショイアー交通相は99.5%への引き上げを要求したものの、コストがかさむことから3社は抵抗。最終的に99%で折り合った。21年中にはすべての州で例外なく99%を実現することも取り決めた。

通信網を自社で保有する移動体通信事業者(MNO)のドイツテレコム、ボーダフォン、テレフォニカの3社は15年の4G周波数帯割り当て入札で落札した際に、4Gの世帯カバー率を19年末までに98%とすることを義務づけられた。3社はすでに同比率を達成したとしているものの、4Gを使えない地域やエリアは多く、消費者の不満は大きい。独情報通信業界連盟(Bitkom)によると、実際の世帯カバー率は現在96%程度にとどまる。

移動通信網は都市部で構築しやすいものの、人口が少ない地方部では投資の回収が難しいためハードルが高い。

世帯カバー率が低い時点では採算の合う地域への投資を通して同比率を高めやすいものの、すでに同95%を超えている現在、これをさらに引き上げることはMNO各社の大きな負担となる。

こうした事情を踏まえMNO3社は今回の合意で、助成金支給などを条件に99%への引き上げを了承した。これらの条件は今後の協議で決めることになっている。

3社はそうした条件のとして、来年初頭に実施される次世代携帯電話(5G)入札の参加者(すべてMNO)に(1)落札した際のライセンス料支払い時期を落札直後でなく周波数帯が実際に割り当てられる時点とする(2)仮想移動体通信事業者(MVNO)向けの5Gインフラ貸与を義務化しない――などを要求している。(1)は落札事業者のコストを圧縮するための措置で、ショイアー交通相は10億ユーロのコスト削減効果があると述べた。

MVNOはMNO から通信網の一部を借り受けてサービスを提供する事業者。MVNOへの貸与義務がなくなればMNOは競争上、有利な立場に立つことができる。(左のグラフ参照)

だが、これらの要求には問題がある。5Gライセンス料の支払い時期を周波数帯の実際の割り当て時期に延ばす措置を実施した場合は国の収入が減少。同ライセンス料収入を高速インターネット通信網の敷設助成に充てるという政府の財政計画にしわ寄せが出る。また、MVNO向けの5Gインフラ貸与義務を免除する措置は、MNO3社の寡占進展と市場競争の鈍化をもたらし、移動通信サービス料金の上昇につながる懸念がある。

上部へスクロール