雇用主と被用者が結ぶ有期雇用契約は法律で認められた客観的な理由がない限り、合計の期間が最大2年に制限されている。これは「パートタイムと有期労働契約に関する法律(TzBfG)」14条2項第1文に明記されたルールで、雇用期間が計2年を超える場合は原則として正社員にしなければならない。契約更新の回数は3回が上限であり、これを超えた場合は合計の契約期間が2年以内でも正社員にしなければならない。
また、同じ雇用主に以前、雇用されていた被用者については以前の雇用期間を新たな労働契約に反映させ、有期雇用期間の合計を2年以内に抑えなければならない(同項第2文)。これは2年間の雇用後に休止期間を置いて再び有期契約を結ぶという形で有期雇用が事実上、無制限に続くのを防ぐためである。
この第2文の解釈について労働問題の最高裁である連邦労働裁判所(BAG)が2011年の判決(訴訟番号:7 AZR 716/09)で示した法解釈を連邦憲法裁判所(BVerfG)が6月の決定で破棄したので、ここで取り上げてみる。
裁判はバイエルン州にある企業に勤務する被用者が同社を相手取って起こしたもの。同被用者は2007年から09年にかけて被告企業で勤務。その後12年に再採用されたものの、客観的な理由なしに有期契約で雇用されたことから、これを不当として提訴した。
原告の再採用を被告が有期雇用契約とした際に根拠としたのは、BAGの11年判決である。BAGはこの判決で、民法では通常、3年で時効が成立することを指摘。これを根拠に、同じ雇用主の下における以前の雇用と新たな雇用の間隔が3年を超える場合は、新たな雇用を有期雇用としても雇用休止期間を悪用した有期雇用の無限継続に当たらないとの判断を示した。
1審と2審はこのBAG判決を踏まえて原告の訴えを棄却した。
2審のニュルンベルク州労働裁判所がBAGへの上告を認めなかったことから、原告はこの決定を不服としてBAGに抗告したものの、BAGが棄却決定を下したことから、連邦憲法裁に訴えた。
憲法裁の裁判官は今回の決定理由でまず、有期雇用を制限するTzBfG14条2項の規定は雇用主に対し構造的に弱い立場にある被用者を保護するという「職業の自由」(基本法=憲法12条1項)から生じる国の義務に沿ったものであるなどとして、同規定の合憲性を確認。そのうえで、以前の雇用と新たな雇用の間隔が3年を超える場合は雇用休止期間を悪用した有期雇用の無限継続に当たらないとしたBAGの判断について、立法者の意志(法律の趣旨)を無視した拡大解釈に当たるとしてBAG判断の無効を言い渡した。
ただその一方で、以前の雇用期間を再雇用の際に算入する規則が適用されない例外的なケースもあると指摘。具体例として◇以前の雇用が終了した時点から再雇用までのブランクが極めて長い◇再採用した社員に任せる業務の内容が以前の雇用時とは全く異なる――などを挙げた。